株式会社アントレプレナーシップ研究所 代表取締役 原 憲一郎
2020年1月21日付の読売新聞朝刊で「コンビニ店舗初の減少」と言うタイトルの記事が掲載されました。要約すると、「店舗数が減少したのは、加盟店1店舗あたりの売上げが、伸び悩むようになり、大手各社が新規出店を抑制する方向にかじを切ったためだ。出店を増やして売上を伸ばすビジネスモデルは転換期を迎えている。」ということでした。
つまり、「人口の減少」、「ドラッグストア等との競争」、「人手不足による人件費の上昇」から、コンビニエンスストア自体、経営が苦しくなっております。それに起因して「セルフレジの導入」や「コンビニエンスストアの本部においても、新規出店へ力を注ぐよりは、加盟店への支援に力を入れる」とうい方向へシフトしてきています。
さらに、その翌日の2020年1月22日付の読売新聞朝刊では、「コンビニ・外食省力時代化」というタイトルの記事も掲載されました。たとえば、「コンビニや外食をとりまく環境」として、「店舗」においては、深刻な人手不足を背景に、「深夜営業ができない」、「オーナーが休めない」、「店舗の利益が増えない」などが指摘されています。その一方で、「利用者」においては、「ライフスタイルと価値観の変化」として、「ネット通販が普及」、「深夜の利用者ニーズが低下」、「コミュニケーションはSNSで」と指摘されて、「24時間営業の見直し、新規出店の抑制へ」と述べられています。
ところで、こうしたコンビニエンスストアや外食業界が苦戦する理由において共通している点は、「人口の減少」、「競合業種との競争」、「ライフスタイルと価値観の変化」が挙げられます。もちろん、「商業」が勝ち抜くためには、環境の変化に適合し、競合業種との差別化を図らなければならないことは当然であり、それに対応できなければ、衰退どころか廃業という道しかないことも事実です。
では、上述のように厳しい状況に置かれながらも、勝ち残れる企業と衰退・廃業する企業との違いは何かということです。それを一言で言えば、「商業とは変化対応業」ということを実践できるか否かということと考えます。
誰しも、これまでの経験や成功体験から、現在のやり方(商いの仕方)が正しいと考える方も多いと思います。しかし、忘れてならないことは、利用者(お客様)の評価を受けて始めて商業(事業)は継続することが可能となります。しかしながら、そうした原則を無視或は軽視し、変化への対応を試みなければ、衰退や廃業しか残されていません。
しかし、「変化への対応」というと勇気が必要と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。なぜなら、上述のように「商業とは変化対応業」ということを実践すれば良いからです。それが出来ないということは、そもそも商業の基本的機能が理解できていないということもできると思います。「変化」への対応を恐れるのではなく、商業とは常に「変化」を継続することが大切であるということをこの機会に認識していただきたいと思います。
尚、上述のことをより深くご理解したい方は、拙著「中小企業と「コーポレートアントレプレナーシップ」(叢林書院)、「アントレプレナーシップと実践経営」(企業経営出版会)をご参考いただければ、よりご理解いただけるものと思います。
【参考】読売新聞朝刊,2020年1月21日、1月22日。