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コラム_「セーフティーネットに関する私見」

株式会社アントレプレナーシップ研究所 代表取締役 原 憲一郎

 

2020年1月20日付の読売新聞朝刊の社説で,NHKに関する「予算削減の取り組みは十分か」という見出しの記事が掲載されました。その記事の中で、私が最も関心を持ったところは、「受信料を払っている世帯の割合は全国で8割を超えるが、東京や大阪では7割に届かず、沖縄県では半数に留まる。公平性の観点から問題がある。NHKは事態の改善を急がなければならない」ということでした。この記事を読んで、私は「公平性」とは何か?という事のみならず、「セーフティーネット」の重要性についても考えさせられました。

 

放送法第64条を読む限り「受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定されています。つまり、NHKを受信できる設備(一般的にはTV)を有している者は、受信料を支払わなくてはならないことになります。

 

言い換えれば、受信設備を設置した者は受信料を支払ことが義務ではありますが、現状では上述の通り多くの世帯が受信料を支払っていないことになります。以下で述べる私見については、異論や反論があることを承知の上で、私見を述べさせて頂きます。

 

まず、私の私見としては、受信設備を持っていようがいまいが、原則として受信料を徴収すべきと考えます。なぜなら、受信料を支払う余裕のある者が支払わず、余裕のない者が生活費のみならず、食費まで削って支払っている事実があるからです。

 

そこで、私が主張したいことは、「セーフティーネット」です。つまり、「公平性」の観点に立てば、支払能力のある者と支払能力の無い者とを一律に扱うのではなく、生活に困窮している世帯には「還付」等の措置で対応すべきと考えます。なぜなら、NHKは民法ではなく、国営であり、万が一、災害等が発生した時に、人命を守るためには極めて重要な役割を果たす手段を担うからでもあるからです。この「セーフティーネット」の重要性については、以下で述べさせていただきます。

 

上記ではNHKの受信料について述べさせて頂きましたが、もう1点、触れさせていただきたいことは「児童手当」です。自治体によっても差はありますが、基本的に子供が生まれてから中学生が終わるまでは原則月額1万円の「手当」を受けることができます。しかし、その使途を見ると、本当に子育てに必要な方は育児に使用していますが、私が知る限りその「手当」を貯金し、子供が育ち大学等に進学した際の資金として使用する方が多いように感じるということです。TVやネットを見ていても、ファイナンシャルプランナーの中には、その資金を残しておき、子供も教育資金として使用することを推奨している方が多くいます。

 

そのこと自体、現行法の中では合法であり、そうした対応をされている方を責めることは適切とは言えないでしょう。しかし、私がここで訴えたいことは、「児童手当」をばらまくのではなく、本当に必要とする者への給付する仕組みを作ること、そして今は順調であっても、万が一の時に最低限の生活が維持できるようにすることが大切ではないかということです。つまり、それが「セーフティーネット」であると考えます。

 

誰でも、ただでいただける「資金」であれば、多くの方が賛成するはずです。しかし、今のご時世、いつ、どうなるか分からない時代にあって、万が一の際にも、最低限の子育て(対応)ができるという方がより重要ではないでしょうか?これは新規のビジネスに取り組む方にとっても同様であると考えます。

 

そうした整備が整うことで、新たなビジネスにチャレンジする者も増え、もちろん成功や失敗があるかもしれませんが、そうしたチャレンジが経済の活性化や成長には大きな意義があると感じてならないからです。

 

したがって、資金をばらまくのではなく、万が一の際の対応策として「セーフティーネット」を充実させることが、日本経済の活性化と成長には必要ではないかと考えます。

 

 

【参考】読売新聞朝刊,2020年1月20日。