本来であれば「日本は『貧しい国』になってしまった」のテーマの続きを書く予定でした。ただ、来年度予算が成立しようとしているいま、どうしても触れておきたい問題があります。そのため、今回は少しだけテーマを変えて、この問いについて考えてみたいと思います。
現在、物価高騰から生活を守るための施策が示され、来年度予算も間もなく成立しようとしています。「給付付き税額控除」の導入検討や、期間を区切った食料品への「消費税ゼロ」といった施策も示されています。これらは、目の前の苦境に直面している人々を社会全体で支えようとする意志の表れでもあるのでしょう。
しかし、私はどうしても腑に落ちないところがあります。特定の政策を批判するためではありません。腑に落ちない理由は、目先の課題が強調される一方で、本来必要な「将来に対する明確なビジョン(設計図)」が見えにくいと感じるからです。
第1点は、「給付付き税額控除」です。これは、税を納める人には控除を、所得が一定以下の人には現金を給付するという、非常に画期的な仕組みです。「働けば働くほど手取りが増える」という意欲を支えつつ、格差を是正する理念も持っています。しかし、この制度を真に機能させるためには、所得と資産の公平な捕捉という土台が欠かせません。誰が、どこで、どれだけの支えを必要としているのか。それを正確に把握するインフラをどのように構築し、社会全体で信頼し合うのか。この本質的な議論を抜きに給付や減税だけを語ることは、将来に新たな不均衡を生む可能性があります。
第2点は、「消費税のゼロ化や廃止」です。家計への即効性という意味では期待が寄せられています。しかし、これもまた一時的な救済の先に続くビジョン(設計図)が見えにくいと感じます。これまで社会保障を支えてきた財源のあり方を、私たちはどのように再定義するのか。もし期限付きの措置とするならば、その後の激変緩和をどう設計するのか。制度を変更するには、レジ改修など現場の負担も含め、多大な社会的エネルギーを要します。そのエネルギーを一時的な対応に費やすのではなく、次の時代に向けた新しい支え合いの形を構築する原動力に変えていく視点が求められているように思えてなりません。
第3点は、私たちが抱える構造的な問題です。現在の課題は、税制だけで解決できるものではありません。現役世代の負担となっている社会保険料のあり方、多様な手当の整理、そして避けられない少子高齢化。これらの難題に対し、シンプルで透明性の高い設計図を引き直すことが必要です。それこそが、将来への不安を和らげるために欠かせないプロセスだと考えています。目の前の痛みを和らげる施策が必要であることに異論はありません。ただし、その先にある根本治療に向けた議論も同時に進めなければなりません。
最後に、特定の政策の是非を問うことよりも大切なのは、その政策が「5年後、10年後の日本をどう変えるのか」という視点です。一時的な止血は必要です。しかし、それを構造改革の代わりにしてしまっては意味を持ち得ません。今、政治だけでなく私たち市民に求められているのは、安心して歳を重ね、次の世代に希望を手渡せる持続可能な社会の背骨、言い換えれば将来に対するビジョン(設計図)です。それを欠いたままでは、どれほど施策を積み重ねても、未来を切り開く力にはならないように思えてなりません。
2026/03/17