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コラム_「本来の使命を忘れた銀行(金融機関)は排除されるべきである」

株式会社アントレプレナーシップ研究所 代表取締役 原 憲一郎

 

私は以前のコラム「地域金融機関が生き残るための課題」(2017/11/01公開)で,2017年11月1日付の日本経済新聞朝刊を参考に,金融庁が地域金融機関の経営の持続性に着目し,より厳密に精査・検証するような政策を検討し始めたこと,そして今後は地域金融機関の「再編」や「廃業」がより加速することを紹介し,地域金融機関の「本来の使命」とは「地域経済を活性化させること」であると述べました。

 

しかし,2018年4月2日付の日本経済新聞朝刊では,銀行が貸倒引当金を減らし,全体の残高では不良債権問題でゆれた1998年の5分の1,いまやバブル期と同水準まで下がっているという記事が掲載されました。

 

そもそも貸倒引当金とは,銀行が企業などに貸し付けた資金が返済されない場合に備えて,銀行が積んでおく資金のことをいいます。つまり,貸付先の企業の経営状況に応じ,リスクが高くなるほど,多くの引当金を積むことになります。

 

引当金の計上は,銀行にとっては費用となり,利益を押し下げることになり,逆に,引当金を減らせば利益を押し上げることになります。

 

ただし,引当金を計上することが良いのか,或は悪いのかは一概に述べることはできませんが,上記の記事では「取引先企業への融資を渋ったり引き揚げたりして(引当金を)減少している場合もある。」「自らの顧客基盤を失い,ビジネスモデルに悪影響を与える。」と指摘しています。

 

そして,こうした銀行の対応に対し,「金融庁はリスクを過度に避ける銀行の姿勢に警鐘を鳴らし,取引先の育成・支援に取り組むよう促す。」「金融庁は18年年度末に,融資先の区分(「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」)に応じ貸倒引当金を積む根拠となっている金融検査マニュアルを廃止する。」「画一的ではなく将来性やリスクなど企業の中身を分析し,返済可能性を見極める銀行の本業が問われる。」と記されています。

 

金融庁がこれほどの対応に出る背景には,銀行が本来の使命を忘れ,自らの保身だけに走ることにより,地域経済の発展,引いては日本経済の発展の足かせになっているからではないでしょうか。どれだけ「見ため目体裁のよい業績」を示したとしても,それはあくまでも「仮想」でしかなく,いずれは衰退の道を辿ることは容易に想像ができます。

 

私は常々,銀行(金融機関)の本来の使命は,「地域経済の活性化」であると主張してきました。しかし,未だにこのような状況が続くということは,そもそも「銀行(金融機関)には経営状況・事業計画・リスク分析を適切に判断できる人材が欠如していること」,そして「銀行(金融機関)の本来の使命に対する認識が欠如していること」に他ならないと考えます。

 

したがって,こうした銀行(金融機関)は,巨額の税金を投入する以前に,早く市場から撤退すべきと思います。地域経済や日本経済の発展のために……。

 

 

【参考】日本経済新聞朝刊,2018年4月2日。