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コラム_「AI(人口知能)における士業(サムライ業)に関する私見」

最近の新聞や雑誌において,AI(人口知能)に関する記事は,毎日のように取り挙げられています。以前のコラム「人口の減少は新たな産業を創造するチャンス」(野村総合研究所「日本の労働人口の約49%が,技術的には人工知能等で代替可能に」2015年12月2日)の中で,10~20年後には,人工知能やロボット等により,日本の労働人口の約49%が就いている職業において,それらに代替することが可能との推計結果が公表されていると紹介いたしました。

 

この調査の中でも,創造性,協調性が必要な業務や,非定型な業務,たとえば,芸術,歴史学・考古学,哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業,他者との協調や,他者の理解,説得,ネゴシエーション,サービス志向性が求められる職業においては,人工知能等での代替は難しい傾向があるため,将来においても人が担うということも指摘されています。

 

さて,今日(2017年9月25日)の日本経済新聞朝刊で,「代替の危機 新規事業へ挑む」と言う見出しの記事が紹介されました。その中でも,AIによる代替可能性として,行政書士が93.1%,税理士が92.5%,弁理士が92.1%と,極めて高い数値を示しています。その理由として,「定型的な独占業務はAIに取って代わりかねない」と言う指摘の基で,起業をして新事業を始めたり,いち早くAIを取り入れたりする等,業務の見直しに取り組む動きも出始めたと紹介されています。

 

確かに,AIの普及により,士業(サムライ業)における業務のあり方(AI化)のみならず,経営を維持して行く上では,これまでのように「従来のサービスの提供=報酬」だけでは,経営を維持して行くことは困難となることは明らかでしょう。しかし,たとえば,上記で挙げたような「行政書士」,「税理士」,「弁理士」等の士業(サムライ業)の資格を取得するためには,相当の労力と時間が必要となります。

 

なぜなら,それぞれの合格率を見れば,行政書士が9.9%,税理士が15.8%,弁理士が7.0%と,国家試験の中でも極めてハードルの高い資格でもあるからです。そのため,こうした資格を取得するためには,その資格に特化した勉強を相当しなければ,資格の取得は安易には出来ない言うことにもなります。すなわち,そのために相当の時間を費やさなければ,資格の取得は難しいと言うことです。

 

さらに,上記のような業種においては,「定型業務」が多いため,AIの普及が進むに連れ,コンサルタント業等への進出が進んでいるとも紹介されています。しかし,一言でコンサルタント業とは言っても,たとえば,中小企業診断士という国家資格はあるものの,経営コンサルタントという業務は,必ずしも国家資格は必要ありません。なぜなら,経営コンサルタント(コンサルタント業)という仕事は,たとえ国家資格が無くともできる仕事だからです。しかし,それを事業として継続させるためには,「専門的知識」や「経験」は必要ではあるけれども,それ以上に「依頼者である経営者」とのコミュニケーション能力が重要となります。

 

ただし,これは「中小企業診断士」と言う国家資格を否定する意味ではありませんが,私がこの道(仕事)に就く際,弟子入りした師匠でもある片桐正三先生(先生は,パナソニック(旧松下電器産業),本田技研工業,日本ビクター,富士電機製造,損保ジャパン日本興亜(旧安田火災海上)……等のグローバル・カンパニーの流通専任担当として支援をしてきただけではなく,商業分野においても延べ10,000社を越す企業や販売店等の支援をしてきた実績の持ち主であり,最終学歴は早稲田大学大学院の修士課程で,中小企業診断士の国家資格は有しておりません)からは,経営コンサルタントになるには,国家資格等必要ない。それよりもこの道で生きて行くためには,実務経験を積みなさい。そして,勉強等は自分で理論書を読んで身に付けなさい。と言うご指導を受けました。ただし,誤解の無いように申し上げておくと,片桐先生は決して,中小企業診断士という資格を軽視していた訳ではありません。

 

現に,私も経営コンサルタントと言う仕事をさせていただいております。博士(経営学)の学位は有しておりますが,経営に関する国家資格は有しておりません。しかし,30年近く,これまで経営コンサルタントと言う仕事を現在でも続けさせていただいております。

 

今回のコラムで最も述べたかったことは,AIの普及により,士業(サムライ業)における業務のあり方は変わって来ると思います。そして,存続を求めるならば,新たな収益源を求めることも必要となります。しかし,野村総合研究所の調査結果にもあるように,「創造性,協調性が必要な業務や,非定型な業務,たとえば,芸術,歴史学・考古学,哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業,他者との協調や,他者の理解,説得,ネゴシエーション,サービス志向性が求められる職業においては,人工知能等での代替は難しい」と指摘されているように,単に,士業(サムライ業)からコンサルタント業へと捉えるならば,それ相当のノウハウや経験等が必要になると言うことを述べたかったからです。

 

最後に,士業(サムライ業)は,私たちの生活においても必要な仕事であることは事実です。だからこそ,AIの普及によって衰退することなく,創造性を持って,新たな収益源を構築していただきたいと思います。

 

 

【参考】日本経済新聞朝刊,2017年9月25日。