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コラム_「減反による今後の農業産業に対する私見」

2017年9月19日付の朝日新聞朝刊では、『「減反」後へ転機のコメ農家』という見出しの記事が掲載されました。

 

そもそも、「減反(げんたん)」とは、国内で作るコメの価格が下がらないようにするため、国が主導してコメの生産量を減らす政策で、1971年から本格的に始まり、協力した農家に補助金を支給する施策です。当初はコメを作ってはいけない面積を国が生産者に分配したことから「減反」と呼ばれるようになりました。

 

しかし、2004年からは作れる生産量を示す形に変更となりました。しかし、この減反政策も今年が最後で、産地では新品種の導入など、新しい動きがじわりと広がるが、補助金で価格を維持する枠組みは今後も残るとされています。そこで、日本経済新聞の記事を要約すると次のように記されています。

 

現在、国内で750万トンあまりのコメ消費量は年平均8万トンずつ減少している。人気のコメを作る産地が生産量を増やせば、競争はより激しくなる。

 

これまで、高級米市場の頂点には、「魚沼産コシヒカリ」が君臨していたが、北海道の「ゆめぴりか」、山形県の「つや姫」など、高級米市場にはライバルがひしめき、もはや「魚沼ブランド」だけでは生き残れない。

 

あきだわらは「業務用米」でファミレスや牛丼店向けのコメで、卸値は魚沼産コシヒカリの3分の2だが、同じ面積で収穫できる量は4~5割多く、コシヒカリと同等の収入が見込まれるだけではなく、あきだわらとコシヒカリとでは収穫時期が違うため、少ない人手で作業ができ、生産費も下げられる。

 

14年度から、飼料用米に転作した場合の補助金が10アールあたり8万円から最高10万5千円に引き上げられると、飼料用米の生産量は前年より7割多い19万トンになり、16年は51万トンと伸びた。

 

農水省は18年度分も3304億円を転作の補助金として要求する。10アールあたり7500円の補助金にあてる714億円は減反が終われば不要になるはずだが、これを再びコメに使うべきだという議論も出ている。

 

斉藤健農水相は「食料不安が将来起こりえないとだれも言えない。お米の需要が減っても水田を維持していくには、食べないお米を作るしかない。そのために必要な予算を不退転の決意で確保していく。」と述べられています。

 

そして、記事の最後には、補助金の大盤振る舞いを今後も同じように続けていくと、農家の生産費の引き下げはなかなか進まない。農水省がめざす大規模生産者への集約やコメ輸出への足かせになりかねないと締め括られています。

 

今回の記事から、今後の農業産業に対して、「競争」と「補助金」の2点から私見を述べさせていただきます。

 

まず第1点の「競争」について、高級米市場における競争の激化は、望ましいことと考えます。なぜなら、「競争」の無いところには、革新や進歩も無いからです。高級米市場という限られた市場の中においても、北海道の「ゆめぴりか」や山形県の「つや姫」などが参入することにより、これまで頂点に君臨していた「魚沼産コシヒカリ」ですらも危機感を覚え、その地位を維持するのみならず、新たな市場を確保するため、より消費者(海外の消費者も含む)へ受け入れられるように、別の品種へ挑戦するなどの試みをしています。こうした試みは、消費者の視点に立って考えれば、喜ばしいことと言えるでしょう。

 

また、業務用米についても、高級米市場とはドメインを異にし、品質的には高級米よりは劣るとしても、それを受け入れる消費者をターゲットにし、しかも、あきだわらについては、外食業者という販路を開拓し、新たな市場を創出しています。

 

上記の例からも明らかなように、「競争」があるということは、革新や進歩の促進となり、消費者のみならず、生産者の所得向上にとっても良いことと思います。

 

第2点の「補助金」については、斉藤農水相が言うように、「食料不安が将来起こりえないとだれも言えない。お米の需要が減っても水田を維持していくには、食べないお米を作るしかない。」と述べているように、「食料不安」に備えての対策としては必要でしょう。

 

ただし、ここで問題となるのは、「補助金」の使途です。確かに、将来、食料不安が起こらないということは断言できませんし、その可能性もあります。したがって、お米の需要が減っても、食べないお米を作ることも必要でしょう。なぜなら、万が一に備えて……。

 

しかし、記事の最後にも述べられているように、一歩間違えば、農水省がめざす大規模生産者への集約やコメ輸出への足かせにもなりかねません。そうでなくとも、日本の農産物の生産コストは、他国と比較すると高く、それが海外との競争力の低下にもつながっているからです。

 

私は、補助金自体を否定するつもりはありません。ただし、問題はその「使途」です。農水省は「大規模生産者への集約やコメ輸出」を政策として打ち出しています。ならば、その政策と整合性を有するところへ、補助金を出すことが大切なのではないでしょうか。

 

単に、食料不安に備えて「闇雲」に補助金を出すよりかは、大規模生産者への補助金を充実させることによって、食料不安に備えることは十分に可能です。国民の税金を投入する以上、「生きたお金の使い方」、「将来の日本にとって役に立つ使い方」をして欲しいと願うのは、私ばかりではないでしょう。こうしたことからも、補助金の「使途」については、今一度、再考すべきではないでしょうか。

 

 

【参考】

2017年9月19日、朝日新聞朝刊、を参考。