お知らせ

入会のご案内

コラム_「多角的に見れば希望が湧いてくる」

株式会社アントレプレナーシップ研究所 代表取締役 原 憲一郎

 

以前のコラムでも述べたように、最近は事業継承に関する相談が多くなってきました。それに比例するように、直接のみならず弁護士事務所を通じて「廃業や事業譲渡」に関する相談も次第に多くなってきました。その背景には、経営者の高齢化や後継者不足が挙げられるでしょう。

 

たとえば、2018年2月27日付、日本経済新聞朝刊で『「後継者いない」悩む中小企業』という見出しの記事が掲載されました。まずは、その記事の一部を紹介したいと思います。日本の企業数の99%を占める中小企業の多くが廃業の危機に立たされている。中小企業の70歳以上の経営者245万人のうち、約半数の後継者が未定だ。このままでは約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる恐れがある。競争力の低下を懸念する国は自治体などと組んで動き出した。新しいビジネス機会が生まれる一方、外国企業も優良企業の買収を狙う。」と紹介されていました。

 

さらに記事の中では、休廃業する企業のうち約半数が黒字であり、会社を存続したくても後継者を見つけられず、廃業せざるを得ない現実があるとも指摘されています。

 

国も自治体などと組んでM&Aを促しています。上述の約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われるというところだけ見れば、少しオーバーなようにも感じます。なぜなら、日本の中小企業の中には世界に通用する素晴らしい技術があるだけに、こうした国や自治体などとの取組みが上手く行けば、非常に意義のあることと思います。

 

しかし、ここで私は2つの問題点を提起したいと思います。まず第1点は、経営者の高齢化と後継者の不足で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われるということが、あまりにも強調されているということです。その一方では、新しいビジネスも多く生まれています。さらに、そのビジネスはまだまだ伸びる可能性があるため、場合によっては、失われるとされる約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)よりも、はるかに大きくなる可能性もあります。したがって、約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)の喪失をあまりクローズアップすべきではなく、同時に新ビジネスにも焦点を当てて、比較すべきではないかと思います。なぜなら、雇用の減少やGDPの減少のみを取り挙げれば悲観的になりますが、新ビジネスの可能性は無限だからです。

 

第2点は、高齢者の経営者だけではなく、若手経営者にも焦点を当てるべきと考えます。なぜなら、上述の記事では、高齢者の経営者の企業が有する技術に焦点を当てているように感じるからです(もちろん、年齢的や身体的な問題から廃業を選ぶ人もいますが……)。しかし、若い世代の経営者の中には、技術のみならず、ビジネスモデルや新ビジネスを開発する経営者も多く、多くの雇用とGDPを生み出しているだけではなく、これからもますます大きくなると予想されています。

 

確かに、高齢者の経営者による後継者不足による廃業は、雇用やGDPに影響を与えることは事実でしょう。しかし、その一方で若手経営者も雇用やGDPに貢献していることも事実です。したがって、ひとつの事象を単一の方向から見ることにより悲観的に捉えるのではなく、常に様々な角度から捉えるという視点が、物事を客観的かつ冷静に判断することが必要ではないでしょうか?

 

 

【参考】日本経済新聞朝刊,2018年2月27日。